風営法に関しては、許可を取るのもひと苦労ですが、取ってからも守るべき法令や出すべき変更申請等があります。
このページでは、風営法違反をしてしまわないように気をつけて頂きつつ、万が一、違反をしてしまった時の罰則について解説していきます。
※本ページにて解説する風営法違反の内容及び罰則は、風俗営業(パチンコ店を除く)と深夜酒類提供飲食店、特定遊興飲食店のものになります。性風俗関連、一定の立場にあった者の守秘義務違反等は割愛しています。
風営法違反の罰則
まず、罰則には大きく分けて2つの種類があります。
①刑事処分
言わずと知れた処分内容で、罰金・禁固・懲役等の刑事罰が科せられるものです。
ちなみに、逮捕は罰則ではありません。その前の段階になります。風営法違反の場合、逮捕されたうえで、お咎めなし。というのは相当に稀なケースだと思いますが、逮捕自体は罰則ではありません。
②行政処分
こちらは、営業許可の取消や停止。少し軽いものだと指示処分といって違法状態の解消に向けて文字通り指示を受けるものです。
この刑事処分と行政処分はどちらか一方ということではなく、両方が科せられることが多いです。指示処分ですんだ場合は行政処分だけで済むことはあり得ますが、刑事処分だけで終わることはほぼないのではないでしょうか?
違反の内容と刑事処分
風営法には実に様々な遵守事項と罰則の規定があります。
要はあれはダメこれはダメ、それやったらこう言うペナルティがあるよ。というものが非常に多いです。
明らかにそれはダメだよね。というものもあれば、うっかりやってしまいそうなものまで様々です。
以下に違反内容とそれに対する罰則を書いていきますので、大丈夫!と思っている方も念のためご確認ください。まずは刑事処分から。
2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれの併科
ちなみに、併科とは両方が科せられるということで、【2年の懲役+200万円の罰金】とされることもあり得るということです。
風営法違反の中でも最も重い処分となります。違反内容としては
・風俗営業の無許可営業
・名義貸し
・不正な手段での許可の取得(相続や法人の合併・分割を含みます。)
・営業停止命令の違反
ご覧頂くと分かる通り、基本的にはダメなことを知ったうえでやっているケースがほとんどです。この場合は一番重い処分を科せられても仕方ありません。
気を付けなければいけないのは、無許可営業です。許可を得ていると思い込んでいる(?)ケースもありますので、注意しなければいけません。
例えば、
個人事業主として許可を得ていたが法人成りしていた。
接待のない形態で許可を得ていたが接待をしてしまった。
相続が発生したが、必要な手続きをせず営業を継続していた
以上のようなケースです。
法人成りに関しては、名義貸しと考えられることもあります。相続に関しては、相続発生後60日以内に手続きをしなければいけません。民法のように【相続があったことを知った時から】ではないことに注意しなければいけません。
もし、上記の内容を見て、「身に覚えがある・・・」と思われた方はすぐにキチンとした許可を得る必要があります。
この違反で刑事処分を受けた場合、風営法第49条の罪となります。
つまり、風営法の欠格事由に該当してしまい、最低でも5年間は風俗営業ができなくなってしまいます。
1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれの併科
2番目に重たいペナルティとなりますが、かなり項目が多いです。知らずにやってしまうこともあり得ますので、しっかりとご確認ください。
・承認を受けずに営業所(お店)の構造や設備の変更をした
・不正に営業所(お店)の構造・設備の変更承認を受けた
・不正の手段で特例風俗営業者の認定を受けた
・18歳未満の者に接待をさせた
・午後10時から午前6時までの間に、18歳未満の物に客に接する業務をさせた
・18歳未満の者を客としてお店に立ち入らせた
・20歳未満の者に酒やたばこを提供した
・営業禁止エリアでの深夜酒類提供飲食店の営業
この罰則は風営法第50条第1項に該当するため、上述の罰則と同じく、最低でも5年間は風俗営業ができなくなってしまいます。
なお、18歳未満の者の規定について、過失なく年齢を知らなかった場合は罰則を受けない可能性もあります。
ただ、この【過失なく】というのがかなりハードルが高いです。身分証明書の提示は当たり前として、例えば身分証明書を2種類提示してもらってその上で誓約書や第三者(親等)の確認をする等、通常ではやらないような本人確認を経てようやく・・・といった感覚です。
設備・構造の変更については手続きをすればいいだけなので、忘れずにやっておきましょう。
6か月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれの併科
・客引き行為をした
・客引き行為のために、立ちふさがり・つきまとい等の行為をした
客引き行為に関しては、基本的に禁止されています。
後ほど説明しますが、客引き行為は営業停止にも直結しますので、絶対にやめた方がいいです。
100万円以下の罰金
・従業員名簿を備えなかった、必要な記載をしなかった、虚偽の記載をした
・接客をする従業員の生年月日・国籍等を確認しなかった
・上記に関して記録を作成しなかった、虚偽の記録を作成した、記録を保存しなかった
・警察官の求める業務に関する報告・資料の提出をしなかった又は虚偽の報告・資料の提出をした
・警察官の立ち入りを拒否した、妨害した等
この罰則は風俗営業の営業に関する帳簿類や警察への協力といった部分です。
まあ、警察の立ち入り拒否とか虚偽の報告というのは、その後に追加で何かありそうですが・・・
50万円以下の罰金
・許可申請書又は添付書類に虚偽のあるものを提出した
・特例風俗営業者が構造・設備の変更の届出をしなかった又は虚偽のあるものを提出した
・特例風俗営業者の認定に際して申請書又は添付書類に虚偽のあるものを提出した
・ゲームセンター等(5号営業)において玉やメダルを営業所外に持ち出させた又は客の玉に保管した旨を表示した書面を発行した
・管理者を選任しなかった
・無届又は虚偽の書類を提出して深夜酒類提供飲食店を営業した
30万円以下の罰金
・許可証を営業所の見やすいところに掲示していなかった
・相続、法人の合併・分割があって許可の承継を受けたが許可証の書き換えをしなかった
・変更事項の届出をしなかった、又は虚偽の内容の届出書・添付書類を提出した
・廃業後、許可証や特例風俗営業者の認定証の返納をしなかった
ここまでくると手続きだけの話なので、忘れてさえいなければ問題ないと思います。
10万円以下の過料
・許可の承継の承認を得られなかった相続人が許可証の返納をしなかった
・死亡、法人の解散・合併等で消滅したときに許可証(特例風俗営業者の認定証)の返納をしなかった
こちらは許可を受けた本人ではないため、過料という罰金に比べて軽い刑罰となっています。
行政処分の種類と処分の程度
行政処分には「許可の取消し」「営業停止命令」「営業廃止命令」「指示処分」があります。
営業廃止命令は、店舗型性風俗特殊営業、受付所営業、店舗型電話異性紹介営業についての規定になりますので、実質は3種類となります。
処分としては大きく分けると以上の3種類ではありますが、そこから細分化して規定されています。以下に列記しますが、これに縛られるものではなく、情状酌量の余地があれば取り消しが営業停止になることもありますし、2つ以上の法令違反があったり、常習性のある場合はより重い処分になることもあります。
あくまで参考程度にご覧ください。(もちろん、違反をしないように営業をして頂くのが前提となります。)
A 風俗営業にあっては取消し。飲食店営業等は6月の営業停止命令
構造・設備の無承認変更、偽りその他不正な手段による変更に係る承認の取得
名義貸し禁止違反
年少者接待業務従事禁止違反
年少者接客業務従事禁止違反
営業停止命令違反
B 40日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は、3月。
不正の手段による認定の取得
年少者の立ち入らせ禁止違反
未成年者に対する酒類・たばこ提供禁止違反
客引き禁止違反
客引き準備行為禁止違反
C 20日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は、40日。
営業時間制限違反
許可の条件違反
D 10日以上80日以下の営業停止命令。基準期間は、20日
構造・設備維持義務違反
接客従業者に対する拘束的行為の規制違反
従業者名簿備付け記載義務違反
接客従業者の生年月日等の確認義務違反
報告・資料提出義務違反
立入の拒否、妨害、忌避
E 5日以上40日以下の営業停止命令。基準期間は、14日。
特例風俗営業者の営業所の構造又は設備の変更に係る届出義務違反
照度規制違反
特例風俗営業者認定申請書等虚偽記載
管理者選任義務違反
F 5日以上20日以下の営業停止命令。基準期間は、7日。
変更届出義務違反
認定証返納義務違反
G 営業停止命令を行わないもの
許可証亡失・滅失届出義務違反
許可証等掲示義務違反
相続承認時許可証書換え義務違反
許可証返納義務違反
合併(分割)承認時許可証書換え義務違反
変更届出に係る許可証書換え義務違反
H 5日以上80日以下の営業停止命令
都道府県の条例違反 基準期間は、以上の基準に準じて各都道府県において定めるところによる。
刑事処分にしても行政処分にしてもペナルティを貰わないのが一番です。
うっかりして手続きを忘れることがないように店舗の内装、人の異動の際に「何か手続きがいるかな?」と調べるといいかもしれません。
従業員名簿の作成や、会計記帳等のみのご依頼も承っております。面倒な手続きを丸投げしたい方はお気軽にお問い合わせください。
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